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高野山奥の院の小早川隆景墓塔 [遺跡]

真言宗の聖地として知られる高野山、その奥の院には多数の供養塔が立ち並んでいます。 この中に、小早川隆景のものが存在するという情報を得て、4月の連休に現地へ確認に向かいました。 ここではその際の現地での情報とその後の補足をまとめています。

発端

今回、きっかけとなったのはネット上で頂いた情報で、高野山奥の院に隆景の墓塔がある、というものでした。 大元となるものは近代デジタルライブラリーで公開されている、明治37年に発行された 『高野山名所図会』 [1](以下『名所図会』)となります。

この資料の「奥の院の重なる墓碑と諸遺跡」の項に、参道左、右それぞれに立ち並ぶ供養塔についての記載がありますが、そこに「小早川家墓(中納言隆景)」との記述が存在します(括弧内は小文字での記述、以下同)。 ただし、位置を示す図がないため、具体的な場所をこの資料からは確認できません。

奥の院の墓塔群

奥の院に存在する墓碑の資料についてはなかなかまとまったものを見いだす事ができず、個人的にはこれまで現地の奥の院入口、一の橋そばの観光案内所で販売されている案内図(100円)を活用していました。

今回、事後ですが墓碑銘が書かれた古い高野山の絵図の存在を大津美月氏の論文[2]により知る事が出来ました。 そうした絵図の一部が日野西真定氏の編集により出版されています(『高野山古絵図集成』[3])。 また、その解説索引「索引 奥院の部」では以下の資料から墓碑の記載有無がまとめられています[4]。

  • 奥院絵図(宝永4(1707)年)
  • 高野山奥院総絵図(寛政5(1793)年)
  • 南山奥之院諸大名石塔記(文政5(1822)年)
  • 紀伊続風土記(天保10(1839)年)[5]
  • 高野山奥院霊跡案内図絵(昭和2(1927)年)

これらの資料から、隆景墓碑は井伊家の墓塔群が並ぶ近くに五輪塔として存在し、隣には毛利市正(吉敷毛利氏関係者か)[6]の五輪塔があることが確認できます。

高野山の隆景逆修墓

今回、資料確認が事後となったため現地に到達するまで、隆景の供養塔が残存しているのか、どのようなものであるのか、一切不明なままでした。 結果として、実際に絵図類に示されたものと同じ位置に今も墓塔は残っており、その場所には4基の五輪塔を含む10数基の墓碑を見る事ができます。 また、隆景の墓碑は逆修墓であり、天正16年に建立されたものであること、隣に建つのは同じく隆景妻(問田大方)の逆修墓であることが確認できました。

隆景逆修墓の墓碑正面には以下のように書かれています(実際には右からの各行を1行ごとに記載、★は梵字、☆は読み取れなかったもの)。

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祢津を歩いて [遺跡]

信濃国小県郡祢津(ねつ)、現在の長野県東御市祢津地区は江戸時代の寛永年間以降を通じて旗本松平氏の所領でありました。 この松平氏は徳川家康の異父弟で元は久松氏であった松平康元につながる家系です。 旗本としての初代である忠節は大垣藩主忠良の庶長子で、その妻了照院が以前にも 紹介した とおり、当時萩藩士であった宍戸景好の娘かと思われます。

また、祢津は中世には海野一族の祢津氏の支配下にあった場所で中近世の文物が多く残されています。 今回はこの祢津地区に今も残る江戸時代の歌舞伎舞台での平成24年4月29日の公演に合わせて現地を訪問しました。 この日は公演だけではなく満開の桜と好天に恵まれるというすばらしい一日となりましたが、ここでは祢津地区の現況を紹介してみます。

以下で紹介する各遺跡の説明については『祢津地区 ふるさとをたずねて』[1]、『東部町誌』[2]の記述に依っています。 なお、了照院の婚姻を巡る注目点については別項にて改めて整理してみたいと思います。


より大きな地図で 祢津東町歌舞伎 を表示

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もうひとつの今治城 [遺跡]

久々の更新となりました。 基本的な内容は変わりませんが、細かいネタが消化不良気味に溜まってきたため、今まで以上に裏付けの不十分なものも、簡単に整理しつつ掲載してみたいと思います。 また、今後は、今回のような実地の紹介と合わせて取り上げていくことになるかもしれません。

もうひとつの今治城

伊予国の今治城は関が原合戦の恩賞として伊予半国20万石を得た藤堂高虎が、当時寒村であったとされる今治平野の海岸近くに海水を取り入れた堀を巡らせて築いた平城です。

その後、藤堂氏から松平氏へと藩主が変わっても今治藩の持城として、江戸時代を通じて利用されました。 現在では、当時の建造物が残存するわけではありませんが、本丸を囲う堀が残り、天守閣などが復元された状態となっています。

ところで、今治市内には一見お城と見まがう建造物が存在しているのですが、下の写真がその遠景です。

日吉の城現代版

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